アフターコロナ時代のアジア都市環境学会

都市環境学を科学的に分析すると、都市の主体者である人間と、その人間達を囲む全ての「物」「態」「情」としての環境を考える学問と定義されよう。環境は、時代と共に時々刻々変化すると同時に、平常時と非常時は全く異なる事態を生むため、主体者である人間に与える影響は大である。例えば、平常時でも、季節や昼夜で環境は激変する上、非常時に至っては、昨今の気候変動や大地震、噴火、大火災や大洪水、津波や感染症、原発事故や戦争時までの環境を考慮して、都市環境学を考える必要性はあるのか。同時に、平常時の生活拠点が大都市か地方都市か、先進国か途上国か、熱帯か寒帯か、大陸国か島国の都市かによっても、その環境は全く異なる。

私自身の体験で話せば、1970年頃までの日本で初めての東京オリンピックや大阪万国博覧会の会場設計に当たっては、日本の建築界で全く遅れていた設備分野の知識は全て欧米に求めていた。早大の研究室は、1970年に都市環境工学専修として、大学院生達と「都市の設備計画」を1973年に出版し、1980年には博士30人、修士が200余人に累積した。三浦昌生・渡辺浩文の両君が幹事になって、2003年には「都市環境学」教材を出版した

1997年には日本建築学会の会長として、世界の建築学会との違いに着目。幸い、中国や韓国の建築学会も日本同様、計画系のみならず、構造や環境分野を内包していたが、次々と専門分化する傾向にあったことに危機感をもち、アジアの建築界の実態を世界に発信するため、英文ジャーナルJOURNAL OF ASIAN ARCHITECTURE AND BUILDING ENGINEERING(略称JAABE)を発行する。2002年1月、私が第1号のチーフエディターとなり、日本建築学会(A.I.J.)が2年間、次は大韓建築学会(A.I.K.)、その次は中国建築学会(A.S.C.)が事務局とチーフエディターを出すことになった。

躍進するアジアの情報を世界中に伝えることと共に、アジア各国の建築教育は欧米のようにデザイン中心ではなく、構造・材料・環境・計画・施工・歴史・意匠などの総合的な学会であることを考え、各分野のエディターを各国で選定するなどして、毎年2回JAABEを発行することになった。私は2002年の2巻、次の日本建築学会会長の岡田恒男先生が2003年に2巻、2004年から韓国、2005年は中国からとして今日に続いている。

この3学会共催のJAABE創立者として、このジャーナルを育成すると共に、「アジアの都市環境学」を広報するためにも、私の研究室のOBが中心になって新組織をつくる必要性を痛感した。2001年7月、末吉興一北九州市長参加の下、第1回の国際会議「アジアにPRHを普及させる」を、新設したアジア都市環境学会主催で開催する。第2回は中国の西安交通大学で、第3回は東京の日本建築学会で、第4回は韓国の釜山で、と毎年1回の国際会議と共に、発表論文集Journal of Asian Urban Environmentを発刊して、今日に至る。

アジア都市環境学会の会員は、都市環境学教材の執筆者とその学生たちが中心であった。2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故を機会に、自然災害のみならず、原発などの人為的災害についても見直して、2017年7月「都市環境から考えるこれからのまちづくり」を出版する。20世紀末の都市スプロールと人口増大時代から、建築の「減築」、都市は「縮減」時代、2015年の国連SDGsに沿っての2030年目標で、アジア地域のみならず世界的視野で、気候変動や有史以前の時代からの文化・文明をも視野に入れた都市環境の研究が大切なことを実感していた。

早速、2020年の新型コロナウィルス・パンデミックで、中国の武漢市をはじめ、世界中の大都市でロックダウンが実行された。アフターコロナのメガトレンドとしての1.分散都市、2.監視社会、3.新常態、4.職住融合、5.三密回避によるStay home。

アフターコロナ時代にあって、都市環境学は、スマートシティやスーパーシティの発想とは一線を画して、都市と地方の二地域居住の制度化研究が必要である。この機会を捉えて、地球環境と人類の持続可能な社会に寄与する都市環境学のデシプリンを再構築したい。

具体的に、ビフォーコロナ時代に目指していた熱くなる大都市対策としてのN.Y.モデル、安全・安心モデルとしてのロンドン・モデル、絵になる美しい都市づくりとしてパリ・モデルを超えるため、2050年ゼロエミッション東京戦略、東京直下地震や東南海地震にも安全を保障できるイノベーション、原発事故や感染症対策にも安心できる生活設計を可能にする手法を見える化すること! 

自己実現のためとして、週日、銀座オフィスに行き、年1~2週間は伊東と八ヶ岳山荘で、ふる里の富山の家へは2~3日、そんな単調生活もアフターコロナ時代に不可能になった。都心の銀座オフィスの家賃高騰、公共交通の以前と変わらない満員状態、都市間移動の規制等々に加えて、新しい研究への民間投資意欲の激減等々。

このような状況こそパラダイムシフト実行のチャンスである。価値観を変えてのライフスタイルを一変すると同時に、アフターコロナ時代の都市環境学会のあり方について実証研究を始める時と思う。1.分散都市、2.監視社会、3.新常態、4.職住融合、5.三密回避について、実感されていることを論文として投稿してくださることを願って。

尾 島 俊 雄

2020年8月1日

【尾島名誉会長】 アフターコロナ時代の都市環境学.pdf

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